こんにちは。ムジークです。
音楽の教科書にも載っている鑑賞教材に、
サン=サーンス作曲「動物の謝肉祭」から「白鳥」
という曲があります。
多くの人は聴けば「ああ、この曲か」となるであろう有名曲です。
聴く前に、この曲が鑑賞教材としてどうして相応しいのか整理しておきましょう。
❶チェロとピアノという、シンプルな編成であること。
❷チェロパートとピアノパートが一見全く違う動きをしていること。
➌「白鳥」というイメージしやすいタイトルが付いていること。
❹描写音楽として理解しやすいメロディラインであること。
という、曲そのものに関する鑑賞ポイントはあるのですが、
❺サン=サーンスのこの曲に対する思い入れ。
にも目が向けばよいなと思っています。
また、この曲は、通常ピアノ1台とチェロで演奏されることが多いのですが、
❻原曲はふだんイメージするものと多少違う編成であること。
にも目を向けさせてよいと思います。
今回のポイントは少々分かりにくいかもしれませんが、まずは演奏をお聴きください。
サン=サーンスは、19世紀から20世紀前半にかけて活躍したフランスの作曲家です。子どもの頃から才能を発揮し、モーツァルト以来の神童とうたわれました。室内楽曲から協奏曲、交響曲、オペラに至るまであらゆる分野に名曲を残した大作曲家です。
「白鳥」はたくさんの動物が登場する「動物の謝肉祭」という14曲からなる組曲の13曲目に当たる曲です。「動物の謝肉祭」はこぢんまりとした編成の室内楽曲で、サン=サーンスが友人たちと楽しむために作曲されたと言われており、「白鳥」以外は既存の作品のパロディが含まれているため、自分が死ぬまで出版してはいけないと遺言したと言われています。
それでは、鑑賞教材としてのポイントを簡単に。
❶チェロとピアノという、シンプルな編成であること。
この曲に登場するのは、チェロとピアノのみです。2種類の楽器のみの演奏なので、その役割を簡単に捉えることができるでしょう。
❷チェロパートとピアノパートが一見全く違う動きをしていること。
楽器の聴き分けができたら、それぞれの動きを見てみましょう。チェロが流れるようなメロディを奏するのに対して、ピアノが分散和音を奏でていることが簡単に捉えられるでしょう。
➌「白鳥」というイメージしやすいタイトルが付いていること。
「白鳥」という鳥は、児童が比較的イメージしやすいでしょう。曲のどの部分が白鳥なのか、考えさせるのもよいでしょう。水の上を進む白鳥をイメージする児童が多いのではないでしょうか。
❹描写音楽として理解しやすいメロディラインであること。
水の上を進む白鳥の写真は、教科書にも載っています。では、その動きはチェロとピアノ、どちらで表されているか考えるのもよいでしょう。わたしが授業したときには、チェロが水面上の優雅な白鳥、ピアノが水面下の白鳥の忙しい足の動き、と表現した児童がいました。ピアノは白鳥の後ろにできる小さなさざ波、と表現した児童もいました。描写音楽として優れていることが感じられるでしょう。
❺サン=サーンスのこの曲に対する思い入れ。
「動物の謝肉祭」は、上にも書いた通り、プライベートな場での演奏を想定し、ふざけた雰囲気の曲が多いのです。その雰囲気を感じるため、例えば「亀」や「象」を聴くのもよいでしょう。その中で「白鳥」は、異彩を放つほどに美しい音楽です。サン=サーンスは、この「白鳥」のみ、生前に出版を許可したほどです。サン=サーンスの真面目な一面を見ることができます。
❻原曲はふだんイメージするものと多少違う編成であること。
さて、教科書の写真や音源ではピアノとチェロという編成で聴くことが多いこの曲。でも、本当の編成はピアノ2台とチェロなのです。この曲のみ出版されるときに第2ピアノがカットされたのです。第1ピアノが分散和音で美しい伴奏を聴かせる中、第2ピアノは何をしているでしょうか。第2ピアノの高音による合いの手の意味を考えることも楽しいでしょう。わたしが授業をしたときには、第2ピアノの高音は、時々落ちる水の滴、と表現した児童がいました。いずれにしても、原曲の編成で聴くことには意味があります。
以上、わたしなりにポイントを挙げてみましたが、この曲が美しい名曲であることは確かです。
児童とその美しさを共有できるとよいですね。
今回は鑑賞教材としてご紹介しましたが、朝の音楽や下校の音楽としても最適です。
以上、ムジークでした。今回もお付き合いいただきありがとうございました。
追加情報です。
せっかくですから、「動物の謝肉祭」を全曲聴いてみましょう。
第1曲「序奏と獅子王の行進曲」、第2曲「雌鶏と雄鶏」、第3曲「騾馬」、第4曲「亀」、第5曲「象」、第6曲「カンガルー」、第7曲「水族館」、第8曲「耳の長い登場人物」、第9曲「森の奥のカッコウ」、第10曲「大きな鳥籠」、第11曲「ピアニスト」、第12曲「化石」、第13曲「白鳥」、第14曲「終曲」
という構成です。
動物じゃない曲もありますが、その部分こそこの曲の面白いところ。
お楽しみください。
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